団地リノベとは「街」をつくること。ブルースタジオのホシノタニ団地

リノベーションをして団地に暮らす。「団地リノベ」という選択肢はここ数年で一気に広がりを見せています。多くの企業が取り組む中で、一風変わった切り口で団地リノベを行うブルースタジオ。団地を1つの「まち」と捉えたプロジェクト「ホシノタニ団地」の真の魅力をお伝えします。

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ホシノタニ団地の外観。外壁には棟ごとにそれぞれ異なる星座が描かれている。

団地に暮らすという答え。なぜ「団地リノベ」が注目を集めるのか?

 そもそも団地とは計画的、集団的に建てた共同住宅のこと。日本が高度成長期にあった1960〜70年代にかけて全国に誕生した。建築されてから40年以上経ち、建物も設備も老朽化した団地の内部に手を加え、自分たちらしく暮らそうという若い世代が今、急増している。


 選ばれる理由はなんといってもコストパフォーマンスの高さ。賃貸・分譲共に新築と比べて安く、子育て世代にとっては魅力的。もちろん「エレベーターがない」「断熱性に乏しい」「天井高が低い」などデメリットもある。一方で、「棟ごとの間隔が広い」「多くの緑が育つ」「公共スペースの充実」など、新築マンションにはない環境をもつ団地も多い。ゆったりとした敷地はそのまま生かし、古くなった内装を変える。内部の壁を取り払い、天井を高くし、床や壁を変え、設備を一新するといったリノベーションを施すことで団地を快適な住まいに変えるのが、団地リノベ。



 「物・事・時間」をデザインすることで、「物件を物語に変える」をテーマに、空間をトータルにデザインする企業、ブルースタジオも独自の観点からユニークな団地リノベを行なっている。
 その最新プロジェクトが神奈川県にある「ホシノタニ団地」だ。

駅前の団地=広場を子どもたちのために開放せよ

マーケットが開かれた際のホシノタニ団地。Photo:高岡 弘

「ホシノタニ団地」は小田急線の座間駅の真ん前にある。小田急電鉄が土地建物を所有し、以前は電鉄職員の社宅として使われていた。1965年・1970年に建てられた南側の2棟は、耐震強度が十分でないことから無人のままそこに置かれていたという。
「2011年に初めて訪れたとき、駅のホームから仮囲いに被われた敷地が丸見えで、軽く衝撃を受けました。もし現状を変え、人々に好印象を与えることができたら、座間の街全体のイメージを好転できると思ったのです」とブルースタジオの大島芳彦さん。



 そこから、ブルースタジオの戦いが始まる。プロジェクト始動の当初は、ごく一般的な「駅前の再開発」をするという選択肢もあった。たとえば社宅を壊し更地にして駐車場にする、複合施設を新築して下層階にショッピングモール、上層階を賃貸マンションにする。でも、その計画では、座間らしさは生まれない。おそらく、集客も難しいだろう。大島さんは、早い段階から「子供のための駅前広場をつくりたい」ということを強く主張した。


「団地って、建ぺい率が20%を切るんです。つまり、空地や緑、みんなが使える自由な場所が多いということ。都市型マンションではありえないですよね? 駅前に団地=空地=広場があるのはとても貴重。子どもたちが安心して走り回れる場所、街に開かれた本当の意味の広場をつくりたいと思いました」。


家賃が安い、駅から近い、広場がある、そんな環境は子育て世代にとっては貴重だ。話し合いを重ねる中で、「既存の建物をリノベーションし、開かれた団地をつくろう」という声が高まっていった。

「まち」としての機能を果たす。開かれたカフェ、菜園、子育て支援施設をつくる

 いくつかの団地リノベを手がけるブルースタジオが、リノベーションの計画を立てる上で大切にすることは、街に開かれているかどうか。ホシノタニ団地の場合、付近の施設を所有するのは小田急電鉄である。大家が同じならば、建物も、駅も、線路も、そのすべてが団地だと考えられるのではないか。大島さんはその考えのもと、プランニングを進めた。団地の1階部分にはカフェ、子育て支援施設、レンタル菜園、コミュニティキッチン、ドッグランを用意。これらは団地に住む人のためだけの施設ではなく、座間に暮らすすべての人のために開かれている。


「僕にとって、団地は公園に近い存在なんですよね。子供が集まって遊ぶ場所であったり、通り抜けできる道であったり。ブルースタジオの行う団地リノベが他者とは違うのは、団地を“まち”として考えている点です。インテリアを変えましょう、DIYしましょう、だけではない。敷地の広さ、建ぺい率の低さ。その地にずっとあるという存在感。そういった魅力を踏まえて団地リノベをしたい。新たな公共性をデザインし直すべきだと思うのです」。

ホシノタニという名前に込められたもの

入り口に設置されたタイルで名前を描いた看板。Photo:高岡 弘

 大島さんたちは、ホシノタニ団地を計画するにあたり付近の歴史を調べていくうちに、鎌倉時代から続く、星谷寺(相国寺)の存在を知った。昼間でも満点の星を移すという伝説のある井戸がある寺。「駅ができる以前、きっとこの地には星がいっぱい見えたのでしょう。古い情景から団地の名前をつけました。歴史の中の1ページに自分の暮らしが刻まれているって素敵なことですから」。

 私鉄沿線の未来を考えてみよう。従来、郊外に行く電車は沿線に人の住む場所を用意することで発展してきた。でも、今は、都心から離れれば離れるほど、高齢化が進み、急行が止まる駅以外は人口の減少が進んでいる。だからこそ、家にフォーカスするのではなく、街自体のブランディングをしよう、ブルースタジオはそう考えている。
「子育て世代が求める環境がホシノタニ団地にあります。ここができたことによって、座間全体が魅力的な街に変わっていってほしい。ここがモデルケースになってほしいと願っています」。

↓ホシノタニ団地の魅力的な施設を紹介。

◆農家カフェ

貸し農園に面するカフェ。ひとりでのんびりと、子供と一緒に、友人とおしゃべり。フレキシブルに使える場所。Photo:矢野信夫
カフェスペースと隣接するコミュニティキッチン。ちょっとした料理会の場として活用できる。Photo:矢野信夫

菜園と面する場所にある居心地の良いカフェ。2室をひとつながりにした広々とした空間が広がる。コンセプトは「食とイベントを通じて、生産者と消費者を直接つなぐ」。生産者(農家)と企業(株式会社アグリメディア)が共同経営しており、産地より直送した食材を用いたメニューが揃う。複数人が集えるコミュニティキッチンも。
◆場所/3号棟 1階 ◆営業時間/11:00~19:00 ◆休日/なし(年末年始、GWを除く)

◆貸し農園・シェア畑

貸し菜園。アドバイスを受けながら四季の野菜を育てられる。Photo:高岡 弘

自分専用の区画で野菜づくりを楽しめる、サポート付きの農園。専任の菜園アドバイザーによる指導が受けられ、初心者でも無農薬・有機質肥料の野菜づくりをスタートできる。キッズへの食育にもぴったり。
◆¥6,389~/6㎡(税抜・月当たり/種・苗、肥料、農具レンタル等含む)
◆お問い合わせ先/株式会社アグリメディア TEL0120-936-466
http://www.sharebatake.com/farmer/zama/

◆子育て支援施設『ざまりんのおうち かがやき』

「ざまりんのおうち かがやき」。団地の住民以外の人でも気軽に子育ての支援を受けられる施設。

座間市による子育て支援施設。安心して子どもを遊ばせることができ、専門家への子育て相談やママたちの情報交換もできる出会いの場。予約の必要はなく、無料で利用が可能。
◆場所/4号棟 1階
◆営業時間/10:00~16:00(第2木曜は~15:00)
◆お問い合わせ先/社会福祉法人光輪会(座間保育園) TEL046-255-7070
http://www.city.zama.kanagawa.jp/www/contents/1432594865157/index.htm

【DATA】
ホシノタニ団地
構造・規模/鉄筋コンクリート造地上5階建
募集戸数55戸/
契約形態/定期建物賃貸借契約5年
企画・設計監修/株式会社ブルースタジオ
設計・施工/大和小田急建設株式会社


【RENT】
専有面積/37.38㎡
賃料/¥70,000~95,000+管理費 ¥5,000
※敷金1ヶ月・礼金1ヶ月・別途住宅保険加入、保証会社加入必須
※条件は予告なく変更される場合があります。ご了承ください。
※図面と現況が異なる場合、現況を優先します。

◆取材協力/ブルースタジオ
ホシノタニ団地 
http://www.odakyu-fudosan.co.jp/sumai/mansion/hoshinotani/


Text:山本奈奈(LIMIA編集部)  

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