島根県に映画館を作った理由とは?小野沢シネマ和田支配人×北條支配人(ユーロスペース)対談

映画館には忘れ物がいっぱい!? 映画館空白地帯であえて開業 成功事例になれば革命的な映画館になる! ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストをお迎えして映画、映画館 […]

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映画館には忘れ物がいっぱい!? 映画館空白地帯であえて開業 成功事例になれば革命的な映画館になる!

ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストをお迎えして映画、映画館にまつわる様々なお話をしていただいております。

今回のゲストは、島根県益田市にできた新しいミニシアター、小野沢シネマの和田浩章支配人です。

千葉県出身で前職は、シネマ・チュプキ・タバタの支配人だった和田氏。一体なぜ島根県で映画館を作ることになったのか?お話を伺ってみました。

対談動画全編は、ミニシアタークラブに入会後、閲覧可能です。
https://basic.motion-gallery.net/community/minitheater/

対談レポート

−島根県益田市に作られたとのことなんですが、まず場所についてご説明ください。
和田「島根は、出雲や松江が有名かと思うんですが、益田市はその中でも西の方で山口県に近いところにあります。この一帯は映画館がなくて、益田から出雲とか広島に行くしかない状況です。

例えば出雲に行こうとしたら車で2時間半から3時間、片道かかります。これはどうゆう距離かというと東京から出発した場合、富士山までいく距離なんです!

これだとなかなか映画館に行って映画を見る、という体験はできません。人口4万人の映画館空白地帯の益田市に映画館を、と思った大きな理由の一つです。

ちなみに、益田市は、「過疎」という言葉が生まれた地でもあります。」

−設立までの経緯について
和田「島根は、元々は僕はなんの関係もなくて(千葉県出身)、妻が島根県益田の出身です。それで前の映画館(シネマ・チュプキ・タバタ)の支配人をやっていた時に、この益田市の映画館が入っているビルの創業者のお孫さんと知り合う機会がありまして、一度映画館を見てもらってなんとか再開できないかどうか相談を受けたりしてました。それで見に行ったらビックリするくらいのいい状態で残ってました。それが最初のきっかけで、何年か経った後に、子育てをしながら東京で働いていた時に両立が難しくなり今後を見直すことになりました。自分のライフワークの中に子育ても重要な要素でもありましたし。

今後を見直す中で、他の地域での映画館のお仕事の話もあったんですが、やはり自分の個人的な思いいれのあるところで全力投球したいなと思い、益田市に作りました。その島根愛が強まった要因は、とにかく妻の島根愛が強いというのがありました。

彼女との出会いが、明治大学のバリアフリー映画祭というところで、彼女はそこで映画を介してこんなにも世代を越えて人と人のコミュニケーションが豊かになるんだと実感したようで、人口減少が進んでいる島根でも映画館があればという思いをもちづづけていて、私もチュプキを立ち上げて仕事をしていて、先ほど言いました、子育てと仕事の両立という転機の中、今回の動きになりました。

自分の地元は、無くなるという危機感はないですが、妻は自分の故郷が無くなるかもしれない、という危機感を持っていて、その危機感を知ってみたい、そしてそこで映画館を作りたい、と本当に思いました。

あと、更なる後押しは娘の存在ですでね。彼女は‘映像吸い込みマシーン’で(笑)、とにかく映像が大好きで、ある時自分が音声ガイドを手がけた『漁港の肉子ちゃん』を一緒に見に行った時に当時2歳半だった彼女が、「お父さん、映画素晴らしかったね」て言ったんです。<素晴らしい>という言葉は教えたこともなかったのに。それでこれからは未来の子供達のため映画を届けようと、将来娘から母親の故郷がどうして無くなったの?って言われないように頑張ろうと!。」

−いい状態で映画館、建物が残っていたとは言え実際は大変だったのでは?
和田「この建物が結構ミステリーで、電気の配線を見てもらいに何件か電気屋さんにお願いしたんですが、4件くらい断られましたね。(建物の構造が古いのと、途中、部分部分手が加えられていてかなり複雑化していて)。例えば、部品が‘ナショナル’ とかだったりして(笑)。ない部品のものなどが多くて大変でした。本当に謎解きミステリーツアーでした。そうゆうハード面、お金面の苦労の他に、地域のみなさんが割と「静観スタイル」で静かに優しく見守ってくれる方が多い地域特性でして、それはありがたいですが、見守ってたら沈みます!(笑)という中でやってました。やはり、新しいことに対しては慎重になってしまうという。これは地方ではよくあるとことだと思いますが。

北條支配人「お話を聞いてて、すみませんが、まず益田ってどこにあるの?という疑問から始まって、ユーロスペースもたまに配給することもあるんですが、島根で上映してもらったことが何回あるだろう?というくらいの印象でした。あと、映画館が成り立つ街って人口規模で言いますと最低でも10万人は必要だろうと思うんですが、益田市人口4万人の中で映画館経営を行うのはすごいなと思いました。

映画館を維持するために映画館に何度も来てもらわなければいけないということで。なので和田さんが上映したい作品の前に、街の人が観たい作品を優先しなければいけない。それが第一のお仕事になってくるかと。よく私が新しい劇場さんに申し上げるのは、まず上映のスケジュールを埋める。そして劇場が必要な売り上げをたてながら次にその映画館の個性(上映作品の)を作るということなんですけど、まずはこの2番目までのハードルを益田市4万人の皆さんとどう作り上げていくかですよね。最近は、コロナの影響もあって映画館ではなく配信でご覧になる方も多いのでどうやって映画館体験をしてもらうかも課題ですよね。」

和田「そうですね。本当に難しいですね。。今、『すみっコぐらし』を上映しているんですが、見にくる子供の多くは、映画館が初めてという子供さんも多いです。上映後に目をキラキラさせながら帰っていく姿を見るとやっててよかったなと思います。

北條「昔、萩の街の方に聞いたんですが、この街に住んでる子供たちは、高校まで映画館の体験をせずに、大学進学などで都市部に出て初めて映画館を経験する。それまでは、映画館の体験がないという話を聞いたことがあります。これが20年くらい前の話なので、今はもっと進んでいると思います。子供たちや若い方へ映画館へ足を運んでもらうためにどうするべきかは長年の課題ですね。」

和田「そうですね。なかなか大変ですが、映画館を始めたことよって、例えば、『すみっコぐらし』のチラシを保育園に配ろうと思ったたら請け負ってくれる方が現れたり、『アイの歌声を聴かせて』の時は、たまたま高校生の課題実習で映画館を題材にするということで、『アイの歌声を聴かせて』宣伝のために高校生たちがチラシを配ってくれたり。せっかくだから、その子たちに映画を見せたら「やっぱり映画館すげー!」と喜んでましたね。

あと、映画館に忘れ物が多いです。なぜかというと、映画館で映画を見慣れてないので、上映終わって放心状態のまま出て行ってしまい、携帯やハンカチ、手袋などそのまま置いて行ってしまう(笑)。

最近で印象深かったことは、ある70代くらいのお客様が『あん』を観にいらしたのですが、時間帯によって上映作品が変わることを認識されてなく、いらした時はちょうど『アイの歌声を聴かせて』の上映時間だったんです。それで「観て行かれますか?」と恐る恐る聞いたら「いいわ、観ていくわ」と言ってご覧になられたんです。それで上映が終わって出てこられたら、「いやー!気持ちよかったわー。面白かった!」と満面の笑みで感想を言ってくださったんです。これは本当に自分が勝手にこの映画はこの層のお客さんに、この街にはこの映画を、と勝手なうがった目で見ていたんだなと、自分の想像を越えてきた体験でしたね。
なので、人口規模にも関わらず、地域に映画館というのは必要なんだなと実感しました。」

和田「あと、面白いのは今、クラウドファンディングが始まっちゃいました!」
(※クラウドファンディングは、2021年10月29日に終了。
https://motion-gallery.net/projects/onozawacinema )

北條「どうゆうことですか!?」

和田「立ち上げ時にクラウドファンディングを実施してもう終了しているんですが、映画館で映画を見て本当に映画館があるんだと実感して。「あの時支援できなくてすみません。こちらを。」と寄付してくれるんですよね。そうゆうことが起きてある種の希望は感じました。

北條「人口4万人の規模で成り立てばこれは本当に革命的なことですね。ぜひ成功していただきたいです!」

最後に一言お願いします。

和田「自分にとっては映画は時体験。小説とかって自分で前に遡ったりして自分でコントロールできるけど、映画館の映画上映は始まったら時だけが進んでいきますよね、これは芸術の中で映画だけじゃないかなと。閉じ込められた空間の中での不自由さがまた自由じゃないかなと思ってます。これは何が言いたいんだろうな?と思っても一時停止できずにどんどん進んでいく。一体なんだったんだ?と思いながら悶々とユーロスペースを後にしたことが何回あったことか!(笑)

もちろん配信で映画も見ますが、配信だとデータ量は大体800メガ、劇場上映のデータは約120ギガくらいで、約100倍の情報量、やはり映画館という情報量の行き届いた環境で映画を見るという醍醐味を味わってもらうように取り組んでいきたいと思います。」

<Shimane Cinema Onozawa 小野沢シネマ>
HP:https://onozawacinema.com/
Twitter: https://twitter.com/onozawacinema
Facebook: https://www.facebook.com/onozawacinema

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